在宅介護は、トップに立つための必須科目であり、もし、トップの立場を預かるならば必ず経験しなくてはいけません。
なぜか?
逆説的に考えてみましょう。
本能という言葉があります。
ライオンや、トラといった動物を想像すると判りやすいですね。
自分が生きたいために、草食動物を食い殺し、死にたくないために、狩りをする。
彼らに、他の生命を殺してはいけません、と説教したところで未来永劫、聞く耳をもってくれそうにもないですね。
本能が意味する真逆の言葉は、理性です。理性の本当の意味は、生死の流れの超越です。
ただ、これを理解するのは難しいでしょうから、他を利していく思想と行動といえば理解の入り口としては合っています。
さて、ここで世の中をよく見渡してみていただきたいのです。もし、本能のままに総理大臣や都知事をやるとどうなると思いますか?
答えは、今の社会を見渡してみてくださっている通りです。
逆説的に考えるというのは、こういうことなのです。
つまり、トップに立つ、その素養は≪ 理性 ≫です。
そして、理性は、年老いた親御様の在宅介護で育ちます。
この地球をよく見渡せば、その理由が判ります。
ライオンやトラも含め、この地球上にいる人間以外の生命は年老いた親の面倒を看ません。
唯一、この地球上で人間だけが年老いた親の介護をします。
その重責を担おうとする原動力が、≪ 理性 ≫です。
≪ 理性 ≫の無い人間の姿カタチをした生命体に、トップがつとまると思いますか?
≪ 長 ≫の立場のマストな素養
社長、部長、課長・・・、大統領に、総理大臣、都知事、県知事。
この立場の人に必要な素養は、たったひとつ、≪ 理性 ≫だという答えにたどり着くのも、本能でその立場に立てばどうなるかを考えれば判りきったことです。
ところで、≪ 理性 ≫とは何か?
これも、本能から考える必要があります。
そもそも、本能とは生きたい≪ 欲 ≫と、死にたくない≪ 怒り ≫の感情です。
なので、本能のままにトップに立つと、ミサイルや核爆弾を使います。
その正当性は、≪ 自分は正しい ≫。
世界を見渡してみれば、一目瞭然ですね。
・この島は歴史的にみて俺のだ。
・この領土は戦争に勝ったんだからこっちのもんだ。
身近な政治でも同じです。
可愛い、可愛い、自分の長男を政府の役職に抜擢してしまう総理大臣なんて前代未聞です。
申し訳ありませんが、親バカを極めるとはこういうことでしょう。
でも、これは大事なことなのですが、本能のままに生きると如何に恥ずかしく、カッコ悪いのかを教えてくれています。
理性とは何か?
≪ 理性 ≫とは、生きたい、そして死にたくない本能に支配されない状態です。
ちょっと難しいかもしれなので、かみ砕けば、例えば、経営が傾いた企業を静かに立て直して、次の世代に引き継いだ後に、きれいさっぱり身を引いていく人は、理性的です。
カッコいいですよ、こういう経営者。
尊敬できます。
他にも、年老いた親御様の介護をサッとやって、健やかな生活を支えてあげて、最期を迎えたら感謝して別れる。
そもそも、親の介護と聞いただけで逃げ出す人ばかりですから、こんな行動が当たり前にできる人もまた、カッコよく、スマートです。
尊敬できる経営者も、在宅介護の責任を果たす人にも共通するのは、自分の生きたい≪ 欲 ≫と、死にたくない≪ 怒り ≫で、状況を利用しません。
もし、本能に支配された経営者であれば、傾いた企業を立て直すよりは、好調な企業を支配したいでしょうね。
100歩譲って、仮に傾いた企業を立て直しても、連綿と社長の椅子にしがみつくでしょうね。
また、本能に支配されたまま、しぶしぶ在宅介護をやれば、思い通りにならない現実にぶちぎれて、高齢者虐待に走るでしょう。
100歩譲って、高齢者虐待をしなかったとしても、在宅介護の経験から何も学べないでしょう。
在宅介護は、親の最期で終わります。
親は、命を懸けて、子に≪ 死 ≫を教える。
生きたい≪ 欲 ≫と、死にたくない≪ 怒り ≫を超越しろと、親の身の最期を見届ける子に≪ 死 ≫を教える。
だから、在宅介護を責任を全うする子は、本能の支配から脱却して、理性的な振る舞いが当たり前になるわけです。
在宅介護のメカニズムはトップの素養を育む
さて、どれだけ在宅介護の責任を全うすることがパワフルなのか。
言葉の上では、ご理解いただけるはずです。
実際に、在宅介護の責任を担っている最中は、毎日がてんやわんやのままに過ぎるはずです。
しかし、その経験が親御様が最期を迎えた後に活きてきます。
例えば、他人を見て、その人が生きたい≪ 欲 ≫と、死にたくない≪ 怒り ≫の感情に支配されているかどうかなど、瞬時に見分けがつくようになります。
本能に支配された人を友人に持ちたいですか?
組織運営なら重要なポジションにつけたいですか?
私は、在宅介護を経験した人を指して、能力やポテンシャルが高いと評価します。
なぜなら、生きたい≪ 欲 ≫と、死にたくない≪ 怒り ≫の感情を乗り越えている人が、信用に値します。
学歴詐称までして、トップになりたい人の感情はお笑い種なのです。
在宅介護にてんやわんやしているから、良いのです。
その行為に、≪ こんなことしている場合じゃない! ≫なんて思う必要は一切ありません。
親御様の介護に全力を尽くしてください。
全力を尽くすから、病を抱えながら、老い、そして最期を迎えていく親御様の生きるに伴走している実績が作られます。
≪ 生きるとは何か? ≫を学び始めます。
これまで、疑問に思ったとしても、答えにはたどり着いていない問いのはずです。
親御様が教える最期にその答えが待っています。
トップに立つ人間であれば、元来、その答えを知っています。