悔いのない選択

 親が子を信じる気持ちは、とても純粋です。

 鬼籍に入った実母も、岳父もそうでした。

 2023年まで介護をさせてもらった岳母もまた、子を信じる気持ちは純粋でした。

 他にも、多くの親御様にも例外なくその姿を見てきました。
 
 そして、信じて、信じて、信じ切っていたのに、晩年になると実の子供に裏切られる。その時の親御様の悲しみの深さといえば、言葉では尽くせないほどです。

もくじ

うちの子に限って・・・

 子に対する愛着を手放すところから、親御様にとっての在宅介護は始まります。 

 岳母には、私の在宅介護経験を踏まえて、愛着を断ち切らずに子供を信じたばかりに裏切られる、数多くの親御様の悲しみや、苦しみについて、実例を伝えました。

 例えば、私が、実母のお世話をしていた時も例外ではありません。いくつものご家庭で介護の窮状を垣間みせました。

 岳母にお話しした、様々なご家庭の在宅介護シチュエーションを、ここでも簡単に紹介しましょう。

  • あるご高齢の人は、ご自分で築いた家で子供を住まわせたばっかりに行きたくもない施設に入れられて涙します。
  • あるご高齢の人は、一緒に生活を始めたまでは良いですが、老化が進み、病が進むにつれて、暴言を吐かれるようになり、ご自身の金品を持ち去られます。
  • あるご高齢の人は、大きなお屋敷の一室にある片隅のベッドで寝起きするしかない状態に放置されます。
  • あるご高齢の人は、認知症を患い、子供と同居していても、コンビニ弁当や、コンビニおでんをあてがわれます。
  • あるご高齢の人は、老後の相談をしようと手紙を子供に出すも、その返信の辛辣な内容に、もう二度とその子供とは言葉を交わせなくなります。
  • あるご高齢の人は、元気で望んでもいないのに、子供に無断で介護保険申請をされて、望みもしない介護サービスを強要されます。
  • あるご高齢の人は、子供に電話をしても、死ぬまで着信拒否をされたままです。
  • あるご高齢の人は、子供と同居していても、実質的に無視され続けます。

 他にも、例をあげればキリがないです。

 うちの子に限っては、親御様ご自身を裏切らないと思いますか?

裏切られて目を覚ます

 まだ健康状態が良好に維持できているうちは、子供に裏切られても対処する幅があります。

 こちらの記事で紹介しているご高齢の男性が良い例です。

 しかし、親御様ご自身が認知症を患うなど健康状態が良くなく、すでに子供と同居されていて、財産の権利も共有になっている状況だと、子供に裏切られると最悪です。

 弁護士マターで、対処できればよいほうです。

 自分で動けなかったり、親身になってくれる人がそばにいなければ、子供にやりたいようにやられます。

 どの親御様も、このような状況に置かれたくはないはずです。

 でも、残念ながら、期待通りには物事は運びません。

 涙したり、悔しい思い、悲しみ、落胆をされると思いますが、同時に目を覚ませるチャンスが来たと思ってほしいのです。

 愛着の正体は、苦しみしかないこと。

 そして、愛着は手放さなくてはいけないこと。

 このことに目を覚ましてください。

 どれだけ愛情を注いで子供を育てたとはいえ、生きているうちに子供に「さようなら」と言えることが、どれだけ親御様の心の成長につながるかを知るチャンスです。

在宅介護ができる子供はそう多くいない事実を知る

 では、なぜ、子が親御様の生活を支える在宅介護で問題が生じるのか。

 この答えにたどり着くために、ひとつ、質問をさせてください。

質問|この地球で、子が親の面倒をみる生命は、いるでしょうか?

 この疑問は、実は、私が実母の在宅介護の時に抱きました。

 当時、ネットを調べに調べても答えはヒットしません。

 ここで、野生の狐の子育てについて、以下の記事を合わせて読んでみてください。

 野生の親狐は、子狐を突き放して自立させるわけですが、その後、時を経て、子狐と親狐が森で出会ったらどうなると思いますか?

 答えは、お互いに、親であったことや、子であったことが判らなくなっているのだそうです。

 このことからも判るように、動物の世界では親が年老いたとしても、子が親を世話をするような本能的なメカニズムが存在しません。

 実はこれ、人間も同じです。

 つまり、遺伝子に、子が親を世話をする情報が組み込まれていない。

 まず、この事実を知っておくべきです。

 子が親の介護を嫌う、煩わしいと思う理由がハッキリしませんか!

 まず親御様が在宅介護で子供の支援を受けるかどうか。

 その選択について、親御様ご自身が悔いのない結論を出すための視点についてまとめました。

 それは、エンディングノートをまとめるといった、生易しい幼稚な話ではありません。

 そんなものでは対処できない生命の法則があることをまず知ってください。おそらく、このウエブ・サイトぐらいしか、このような情報発信はしていないのではないでしょうか。

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