在宅介護は、それを始めるにあたって、実は要諦があります。
いわゆる介護度の認定を受けて、ケアマネを決めて、受けたいサービスを決めて、施設を決めて・・・、という介護サービスの受け方ではありません。その過程は、単なる、やっつけ仕事です。
ここでいう要諦とは、在宅介護を有意義な経験にするための思想です。思想というと大げさに聞こえるかもしれませんね。考え方とか、あるべき姿勢という捉え方で構いません。
ステップとして、5つ。
とかくご高齢の親御様を介護するとなると、人生お先真っ暗的な情報が乱舞しているのが昨今ですから、その情報の真偽も見定められずに呑み込まれてしまっていては、そこれそ人生お先真っ暗です。
在宅介護の要諦
在宅介護を始めると、介護作業ばかりにフォーカスが当たりがちです。
やってみると判りますが、実の親御様への介護作業に難易度はそれほどありません。赤の他人様への介護作業となると専門的な技能が要求されますが、それも慣れれば出来るようになるものです。
在宅介護の難しさは、そこにはありません。
本当の難しさは、ご高齢の親御様の介護であれば、親と子の心のあり様、心のマネジメントに難しさがあります。
なぜ、高齢者への虐待が無くならないのか。
ご高齢の親御様の存在が重荷でしか感じられないのか。
そもそも、老いていく生命を哀れんだり、毛嫌いするのかを考えてみれば良く判るはずです。
それだけを観察しても、問題は、身体にあるのではなく、心にあるのが見えてきます。
在宅介護 事始め・5つのステップ
在宅介護を始めるにあたって、心をどうマネジメントすればよいのか。
大きく分けて、次の5つのステップがあります。
- 愛着を手放し、親離れ、子離れを完了する。
- 有終の美を飾る。そのためには身体への愛着も手放し、死を直視する。
- 直視した死と、今ある生との差分により「心」は浮かび上がり詳らかになる事実を確認する。
- 「心」とは、何かを観察できるようになる。
- 心へのフォーカスと、親子の間で心を通わせるコミュニケーションができる関係をつくる。
心をマネジメントするといっても、どうやってやるのか、ご存じですか?
その前に、そもそも、心とは何か?
心を見たこともないのに、そのマネジメントなんてできるわけがありません。
心をマネジメントするための5つのステップなどと書いていますが、実は、これ、心をマネジメントするために、まず心を自分の目で観察できるようになるまでのステップです。
ですから、心をマネジメントするための準備だと思ってください。
準備といっても、そのレベルは高いですよ。
準備だけでも、とてつもなくレベルが高い取り組みが在宅介護には求められます。
当たり前のことを書きますが、在宅介護は他のどんな仕事よりもハイ・クオリティのキャリアになります。
そりゃそうです。
できれば避けたいと思っているのが自分の親の介護ですよね!?
ですから、とてつもなく難しいチャレンジです。
その一端をご説明しましょう。
親御様にとって、ご自分の命に次に大切なものと言えばなにか?
お金、財産、土地?
そうお答えになる人もいらっしゃるかもしれませんが、実のお子様の存在と答える方も多いのではないでしょうか。
ご自分のお子さんが不治の病で自分より早く死にそうだと判ったら、ご自分の命と引き換えてもいいから助けて欲しいと願うのではないですか?
それこそが愛着ですが、親と子で在宅介護の時期が迫るころまでには、その愛着を手放せ、と伝えています。
それができないと、子は高齢者虐待をしますよ、と私は言っています。
親と子、お互いに不幸になります。
親離れ、子離れというのは、なにも親子の縁を断ち切れというのではありません。
というのも、それは、お互いに愛着を手放していく行為です。
愛着は、心にある基本機能のひとつである欲の一側面です。
この内容は、岳母の生活支援が始まった当初から話をしていたテーマでした。
おそらく、たいていの親御様が最期を迎える少し前まで抱えていく課題でしょう。
あくまでも私の経験の範疇ですが、最期を導く病が、親御様にその自覚を促していくのを見せてもらいました。
当たり前と言えば、当たり前なのですが、在宅介護は親の最期で終わります。
そこには、どれだけ欲しても掴めない、全てを手放さざるを得ない現実があります。
呼吸一つ、思い通りならない迫りくる現実が、死なのです
親離れ、子離れは、死に至るまでに手放す、ほんの小さなステップの一つに過ぎません。
手放すのが人生
手放すのが大事だと、ビジネス書でも見受けますがその内容はチープです。
在宅介護では、誰もがとてつもなく大事にしているその身体を手放します。
簡単に書きましたが、ビジネス書のそれと在宅介護では、レベルが段違いなのです。
当たり前ですよね、在宅介護は、親の死で終わるのですから。
身も蓋もないですか?
でも、これが現実だからこそ、厳しめに書いています。
親御様は、これを当然のようできるのようになる。
介護する子は、それを支援する。
それが、在宅介護の現実です。
死を直視する
さて、ここまで主に親離れ、子離れのレベルで≪ 手放す ≫という話をしてきました。
もしよければ、次の記事なども参考になるのでご覧ください。
次の記事からは、死を直視していくストーリーを続けます。
それは、別な言い方をすれば、身体への≪ 愛着 ≫を手放していく。
簡単に書いてますが、おそらく、どういうことか判らない方が多いのではないでしょうか。
健康管理はテキトーでいいとか、そういう意味じゃないですよ。
健康管理はバッチリやって身体を労わりながら、最期まで心を成長させます。
心を成長させる取組として、身体への≪ 愛着 ≫を手放していきます。
私が在宅介護は他のどんな仕事よりもハイ・クオリティですよ、という意味がご理解いただけると有難いです。
ホント、中身が軽いんですよね。チープというか、安易というか、レベルが低いというか。
人生は≪ 手放す ≫こと、なんて誰もが口にする時代になりました。しかし、見受けるのは、せいぜいモノの断捨離です。
本当に手放すというのは、対象物を手放すのではありません。対象への≪ 愛着 ≫を手放していきます。
これは、心の成長を意味します。モノへの愛着はもちろん、親と子の間にあった愛着、そして身体への愛着。
実りある在宅介護は、それら愛着を手放していくプロセスです。そのやり方の準備と言えるのが、この記事でご紹介した在宅介護の要諦、5つのステップです。