初めて介護施設を見学

 認知症を患った実母の介護では、私のレスパイト、睡眠時間の確保のためにデイサービスに通ってもらうことをお願いしました。

 そういうことならと、実母も快く承諾してくれました。

 とはいえ、母と私にとって、介護施設の力を借りるというのは、どういうことなのか?

 情報としては見聞きしますが、体感するのは初めてです。

 今では、どのような介護施設が誰にどう必要なのか、特徴は何なのか、その程度のことは判りすぎるぐらい判りますが、初めての利用は、母も私も、かなり緊張した面持ちだったのをよく覚えています。

もくじ

担当ケアマネジャーによる紹介から始まる

 担当してくださるケアマネジャーと契約すると、ケアプランに基づいて、必要な介護サービスを決めていきます。

 担当してくれるケアマネジャーは、高齢の親御様にマッチするのはもちろん、介護する家族の状況を鑑みます。

 その上で、親御様、そして家族にベストな介護施設を提案してくれます。

 今では介護施設の倒産も増加しており、小規模なデイサービス施設は淘汰されつつある状況です。

 M&Aも盛んで、合併が進むことで施設規模も大きくなる傾向です。

 しかしながら、10年以上前では、さまざまな特色を打ち出している小規模なデイサービス施設がありました。

 特に都心部の人口密集地にその種類は多く、いろいろと考えるものだなぁ、と感心したのを覚えています。

 とはいえ、当時の私にとって、介護施設は未知の領域でした。

 介護サービスの提供を受けるにあたっても、私のレスパイトが主な目的でした。

 そのため、母と私と家内で暮らす自宅から歩いて数分でいける距離にあるデイサービス/ショートステイのある施設を紹介してくれました。

 運営企業も上場企業で、施設の規模も大きく、自社施設とのことでした。

送迎車が自宅まで来る

 歩いて行ける距離でしたが、その施設長が社有車を運転して母と私を迎えに来てくれました。

 時間は、午後でした。

 今でこそ、その理由は当たり前なのですが、デイサービスの業務フローで手が空くのが午後2時前後です。

 そのため、新規の見学は、概ねそのあたりの時間帯に割り当てられます。

 施設に到着して、まず驚いたのが玄関でした。

 暗証番号を鍵にした電気による施錠システムです。

 それを見るや否な、私から施設長に問いかける形で、次のようなニュアンスの会話をしたのを覚えています。

さくら

厳重な鍵ですね。
やはり、認知症で勝手に外に行ったりしないようにするためですか?

施設長

そうです。安全が大事ですから。

 そして、私の感想としてハッキリと覚えているのが、次です。

さくら

閉じ込められた感があるなぁ・・・(心の声)

 そう感じる背景は、施設そのものに旧態依然の設計思想があることは室内に足を踏み入れてみてハッキリしました。

施設内に足を踏み入れる

 施設内に入ると、照明は白色で隅々まで明るく、職員の方々の笑顔も明るく挨拶をしてくれます。

 そして、大きな居室に母と私が入っていくと、ご高齢の男性、女性が約30人ぐらい座っていたでしょうか。

 その全員が一斉に、私たち親子を視線を向け、凝視します。

さくら

なんなんだ、ご高齢のみなさまのこのガン見は・・・

 母は、特段、動じていなかったのですが、私は少々、驚いたのを覚えています。

 私は経験が無いので判りませんが、小さい時の転校というのも、きっと、似たような感覚なのかもしませんね。

 追々判ってくるのですが、このちょっとした洗礼は、だいたいどのような施設でも似たり寄ったりで感じるものです。

 新しい利用者が見学に来ると、そこにいる利用者全員が注目するものだと判ってきて、慣れていきました。

 その後、お茶を出してくれて、案内してくれる担当の職員さんと言葉を交わしたのちに、施設内を案内してくれました。

 そして、すぐに気になったのが、窓の少なさと小ささです。

 外からの視線を遮るように壁が立ち上がり、天井に触れるぐらいの壁の上部にハメゴロシの光取りの窓が並ぶ設計になっています。

さくら

これが施設の設計のデフォルトなんだろうな・・・
 
 さっき感じた閉塞感は、施設という先入観に基づくデザイン思想から来るんだな。

 もっと窓を大きくして、外の光と風を取り入れたら気持ちいいと思うのだけれど、それはそれで不都合さが生じるのかもしれないな・・・。

 当時の私は、息が詰まりそうな感覚がありましたが、同時にあきらめないといけないのだろうという気持ちがあったのをよく覚えています。

 でも、令和の時代になり、介護施設であってもそのような閉塞感を払しょくするアーキテクチャを設計する建築士さんもいらっしゃいます。

 また、この施設は、数ヶ月の利用をもって辞めるのですが、大きな理由はこの閉塞感につながります。当時は小規模で個性的な介護施設もあり、その施設に移るのですが、この辺りの経緯はいずれ記事にしてアップデートしていきます。

 初めての介護施設利用は、親御様にとっても、介護の責任を持つ子にとっても、慎重に構えてしまうものかと思います。

 安全性はどうなのか、人間関係はどうなのか、そのようなことさえ頭が働かないほどに未知の世界だと思います。

 特に、最近は小規模で特徴のある施設の倒産が目立つようになり、画一的な介護サービスの提供が多くなってきているように見受けます。

 もし、ご自分が高齢なって、認知症を患ったとして、本当にその介護サービスを受けたいのか否か。

 施設見学には、親子でぜひ、足を運んで欲しいと思います。

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