いま振返れば、あの時がターニング・ポイントいうご経験は多いはず。
そんなターニング・ポイントは決して喜ばしいこととは無縁です。
東日本大震災をきっかけに、東京でも震災の影響は色濃く、人々の心理に影を落としていた頃です。
水道水の放射能汚染の心配。
計画停電。
余震により揺れ続ける大地。
東日本大震災は、物理的な揺れによって都市生活の脆弱さをあぶりだしましたが、多くの人にとって家庭内の営みの不都合さもあぶりだしたのではないでしょうか?
実母の生活でも、蓋をされてきた不都合な現実があぶりだされていきました。
年老いた親御様の介護は家庭内の問題を浮き彫りにする
私は、実母、そして岳父、岳母と三人の親を介護してきました。
そして、どの介護にも共通して、いざ介護が必要だとなった時、家庭に抱えられている問題や課題が一気に浮かび上がります。
その課題の原因はどこにあるのかと言えば、未解決な親離れ・子離れです。
これは、私が関わった在宅介護だけに限りません。
私は、これを調査するために、実は介護施設で働かせてもらったことがあります。
さまざまなご家庭に年老いた親御様もお迎えにあがるだけでなく、施設内では多くの親御様からご家庭の状況もお話として耳を傾けます。
その内容は、ほぼ例外なく、未解決な親離れ・子離れに起因します。
もちろん、話の中身はそれぞれのご家庭で異なります。
ですから、見え方は違います。
ですが、本質は一緒です。
ちなみに、2024年8月現在で、当ウエブ・サイトで最も人気があるブログ記事をご紹介しましょう。
この記事でも、未解決な親離れ・子離れの問題を扱っています。
救急隊から電話
東日本大震災後の被害の全容が徐々に明らかになっても、その対応策に政府も奔走していた頃です。
実母とも晦日あたりに電話で近況を伝え合いながら、お互いに元気な様子を確認したばかりの頃です。
元日を迎え、日付は変わった午前2時ぐらいでした。
携帯電話が鳴ります。
それは、救急隊からの電話でした。
さくらけんさんでお間違いないですか?
救急隊員は、母の携帯電話を使って、私に連絡をしてくれたのですが、着信が母のナンバーにも関わらず、出た相手が男性だったので、一瞬でただ事ではないと理解しました。
はい。そうですが・・・。
私は▲▲消防署の救急隊員ですが、お母様が倒れられました。
いま、〇×病院に救急搬送しています。
こちらの病院まで来られますか?
えっ・・・。
判りました。〇×病院ですね。タクシー飛ばしてすぐに向かいます。
正月早々から、私は仕事のため、経営している会社の事務所にいました。
たまたま事務所の前にタクシーが停車していたのが幸いでした。
また、正月の深夜でもあり、車通りも少なく、病院まではそう時間がかりませんでした。
しかし、その間中、無事であって欲しいと祈る気持ちでした。
到着するとすぐに、救急隊員から、救急搬送時の様子を聞き、驚きました。
・母は、一人で居たこと。
・急に具合が悪くなり倒れたのだが、たまたま倒れたところで携帯電話に届いたこと。
・母は、なんとか携帯電話を手に掴み、自力で119番通報したこと。
・救急隊員が、同居していた親族に何度も電話してもつながらないこと。
また、病院のドクターとナースから母の容体を聞きます。
・病名を告げられましたが、命に別状はないこと。
・しばらく入院が必要なこと。
・母の入院に際して、着替え等を持ってきてほしいこと。
そうしているうちに、救急で処置が行われ、入院病棟にあがるところで母に会えましたが、眠っていました。
私も、一緒に入院病棟にあがらせてもらいました。
その晩は、付き添わせてもらえるように病院にお願いしつつも、すぐに着替え等は必要になることからタクシーで母の自宅と病院を往復して、入院の準備を整えました。
私への虐待だよ
しばらく入院をした後、母は無事に元気を取り戻して退院出来ました。
入院中は、ほぼ毎日、お見舞いに行きました。
親戚や、他の親族も見舞いに来ていました。
入院期間中でも、可能なケアは見舞いに来る身内がやることが許されていました。
母は、義歯だったので食事後の義歯洗浄をする必要があります。
介護をしている方であれば、口腔ケアは手袋必須ですが、母の義歯なので私は素手でやってしまいました。
私も手にけがをしているわけではありませんから、手を洗浄すればすむ話です。
ですが、私のケアする姿勢をみて、他の親族は目を丸くしていましたね。
本質を見抜く能力のない出来ない人間には、介護はムリです。
よほど、ご自分がお綺麗な身体をされているのでしょう。
だから、口腔ケアごときが汚く見え、目を丸くるするのです。
さて、この入院期間中、母と私の二人きりで話す時間を多く持てました。
そこで、母が私に話をしてくれました。
今の親族との同居生活は、私への虐待だよ・・・。
なぜ、馬鹿な人間は、馬鹿なのか。ご存じでしょうか。
バカは自分が馬鹿だと思えないからバカなままであり、馬鹿のまま死んでいきます。
バカな人間を見ているほど滑稽だなと思うことは他にありませんが、この世界で最も馬鹿な行為の一つは、年老いた親への子による虐待です。
虐待する子に、虐待する理由を聞いてみてください。
それは、他責思考の塊です。
最期を迎えていく年老いた親に対して、産んでくれてありがとうございます、このひとフレーズも言えない人間を馬鹿というのです。