書籍紹介
書籍名:怒らないこと
著 者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:サンガ新書
読ませてもらって
こちらの書籍も、岳母に紹介したところ、何度も読んでくれた一冊です。
写真から分かる通りですが、亡き岳母がマークした付箋は、嵐のようです。
この付箋のページを開くたびに、亡き岳母が何を思って言葉を追っていたのか。
亡くなってもなお、そのページを開くことで、リアルに岳母の気持ちに触れることができるかのようです。
さて、本書が教えてくれる≪ 怒り ≫。
まず、≪ 怒り ≫とは何であるか、から丁寧に教えてくれるので、その正体が丸わかりになってきます。
そして、≪ 怒り ≫は、観ることによって消えていく機能であり、観る力を育てていくことによって≪ 怒らないこと ≫のゴールに達します。
この観る力のプラクティスが、広く知れ渡っている言葉を使えばマインドフルネス、そしてその源流であるヴィパッサナー瞑想です。
また、このプラクティスをするか否かの前に、怒りの正体を徹底的に解明してくれる本書の教えは、年老いた親御様のお世話をする在宅介護では知っておかなければいけない内容ばかりです。
≪ 怒り ≫に吞み込まれた生き方が、どれだけ人生を破壊するのか。
この事実は、ぜひ知っておくべきです。
在宅介護の現場では、高齢者虐待といった悲しい実態が生じます。
年老いて、不自由さが増して、力を落としていく親御様に暴力を振るう行為は、決して許されるものではありません。
確かに、年老いた親御様の介護を抱えながらの生活のたいへんさは嫌というほど判ります。
その状況を逆境と捉える人も、多いでしょう。
でも、よく考えてみてください。
困難が多い状況が逆境、ただただ何事もないような凪のような状況が順境とした時、人はどちらの環境で逞しく成長できるのか?
この答えは、言わずもがなのはずです。
≪ 怒り ≫に呑み込まれそうな状況で、サラッと呑み込まれない立ち居振る舞いができる。
そんな人になれたら、どれだけスマートでカッコいいと思いませんか?
私は、それを成長と呼んでいます。
年老いた親御様の介護は、その成長を促してくれます。
なお、紹介した写真にある本書籍は、以前は、サンガ新書より出版されていました。
現在(2024年4月)は、だいわ文庫から出版されており、容易に手に入るようです。
パワハラ、カスハラ、セクハラ、アカハラ、ドメスティックバイオレンス、そして高齢者虐待。
令和の時代となっても、ハラスメントと呼ばれる行為がエスカレートしているのも、この≪ 怒り ≫のコントロールを失っているからに他なりません。
≪ 怒り ≫をコントロールできない理由、それは一言で言えば、ガキのまま大人になるからです。
別の表現をすれば、人間の姿かたちをしてはいるけれども、精神が動物以下のまま、身体だけが成熟した生命のはびこりです。
動物だって、気に入らないことがあっても不必要には怒りにまみれません。サバンナに生きる動物たちも、冷静さを失い、むやみやたらに気に入らないと怒っていたらどうなると思いますか?
隙だらけで、すぐに命を落とす羽目になります。
その程度さえも判らず、今を生きる私たちが≪ 怒り ≫のコントロールさえもできていない現実。それが、ハラスメントという言葉に集約されているのではないでしょうか。
在宅介護の現場では、それを高齢者虐待と称します。