別のデイサービス施設に移りました

 ご長寿の方が利用されるデイサービスの一日は、およそパターン化されています。

 最初の頃は、新しいお友達もでき、また旧友に再会できるなど、新鮮さはありました。

 しかしながら、その新鮮さも徐々に薄れていきます。ある程度の施設規模だと数十人の利用者がいらっしゃるので、ひとりひとりに希望に細やかに対応するのはムリが生じます。

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小学校ではありません

 以前に介護職員初任者研修を受けていた頃に、ある講師が言っていました。

 デイサービスや、介護施設を指して、「幼稚園」ならぬ「老稚園」だと。

 その講師は、20年以上のケアマネージャーのキャリアがあると豪語されていましたが、随分と差別的な酷い言い方をするものだ、と思ったものです。

 しかしながら、実際に利用者として母をデイサービスに送り出して、帰宅後の声に耳を傾ければ、ある程度の規模の施設サービスに限界がみえてきます。

 数十人単位の長寿の方々、それも認知症をはじめ、さまざまな疾患を抱えている方々を統率しながら、ひとつのサービス・プログラムに参加させていくというのは決して楽な仕事ではありません。

 幼稚園や、小学校低学年であれば、ある一つのプログラムに全員を参加させて学びを深めるといった行為はよくあります。

 たとえば、屋外に出て風景を写生するといった取組などが挙げられます。

 では、そのような取組を長寿の方々が利用する施設で実施できるかとなれば、ハードルは高いものがあります。

 『バカバカしくてやってられん。』

 長寿の方々が介護サービスを利用しながら、そう思う時が増えてくるのも致し方ありません。

 ある程度の規模のデイサービスになると、いつも決まったルーチン的な取組で日々を過ごすのですから、飽きがきます。

 こうなってくると、介護施設を移っていくタイミングを迎えます。

小さな規模のデイサービス施設へ

 大きな規模のデイサービス施設は、設備も近代的に整っていて施錠も難しい暗号キーが備わっていたり、バリアフリーは当然で転倒リスクを低減したりと目を見張る環境です。

 でも、ひとりひとりの希望に目が届くかと言えば、どうでしょうか?

 私の目には、そうは映りませんでした。

 映らない理由を一言でお伝えしましょう。

 設備が良くても、実母のライフスタイルの延長にはマッチしなかった。

 これが理由です。

 日常生活を思い浮かべてみてください。

 家に居たとしても、掃除、洗濯、炊事等々、やることは目白押しです。

 玄関には段差もあるし、廊下もバリアフリーではありません。

 浴室も寒暖の差はあるし、すき間風だって入るのが家です。

 でも、本当はそのような環境が良いのです。

 認知症になったら日常生活をおくるのが難しくなったとしても、どうにかして自立した生活をおくりたい。

 トイレのお世話だって、本当は受けたいとは認知症を患ったとしても誰も思わないものです。

 なので、できるだけライフタイルの延長を感じられる環境を求めました。

 結果、一軒家を少し工夫した規模の小さなデイサービス施設に移りました。

 そこは、利用者の人数が少なく、自由に過ごせる環境でした。

 バリアフリー?

 玄関に段差はあるし、廊下も決して平たんではありません。

 でも、それがライフスタイルの延長なのです。

強制されるのは嫌ですよ

 規模が小さいと、利用するご長寿の皆さんは自由に振舞えるようです。

 もちろん、バイタルを測ったり、体操は皆でするようですが、座る位置が決まっているわけでもなく、仲良しさんと朝からすぐにおしゃべりに花が咲く環境でした。

 ぬり絵をやらされる環境ではありません。

 天気がよければ、外の公園に頻回に連れ出してもくれました。

 暖かくなれば、東京湾の海ほたるまで、ドライブに連れ出してもくれました。

 このようなサービスは、家族でも運転が上手でないとできないですから、貴重な経験をさせてくれました。

 他にも、大型のショッピングセンターに連れ出してくれて、好きなものを購入するといったイベントもやってくれました。

 このような特色のあるサービスは、規模が小さいデイサービス施設ならではです。

 利用するご長寿のひとりひとりのライフスタイルの違いに寄り添いながら、その延長線上のサービスが提供可能なのが小さなデイサービス施設です。

 強制されない、これが何といっても私の母にはマッチしていました。

 家で過ごしていて、強制されたら誰だって嫌でしょうから、それがどれだけ気分の良いことか。

 この施設はとても気に入っていたので、母が最期を迎えるその時までお世話になることになりました。

 この記事を書いているのが2025年です。最近では、介護施設も吸収合併や、M&Aで売りに出される企業も多いように見受けられます。そのため、特色のあるデイサービスには、なかなか出会わないのかもしれません。

 母が最期まで気に入って通ってくれこの小さい規模のデイサービス施設も、母の死去後、数ヶ月で閉鎖になってしました。原因は、介護施設としての設備への要求仕様が厳しくなったためです。

 スプリンクラーを設置しろという事らしいのですが、一般的な一軒家にスプリンクラーが設置されている家なんてありますか?

 今では少なくなってきているのかもしれませんが、できるだけライフスタイルの延長線上の雰囲気を感じられる施設の存在はありがたい、というのが私の実感です。

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