似合わない髪形を強要される苦痛

 先日、あるYoutuberの方が介護施設での散髪サービスについて話をしてくれました。

 さもありなん的な話だったのですが、その原因のひとつとして、認知症になってしまえば、髪型なんて気にもならなくなると思っていませんか?

 もし、そう思っていれば、その考えを改めなくてはいけません。

 介護を必要とするご長寿の方が、男性であれ、女性であれ、髪型を整える、身だしなみを整えるというのは非常に重要な行為であり取組です。

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似合わない髪形を強要される苦痛

 施設に通ったり、入所すると散髪のサービス提供があります。

 比較的安価で、美容師の方が来所してくれて、施設利用で希望するご長寿の方々の散髪をしてくれます。

 その時、認知症に罹患したご長寿の方は、どのように髪形をオーダーされるかご存じでしょうか?

 実は、上手く伝えられなかったりします。

 では、どのような髪型でも良いのかと言えば、違います。

 キチンと似合う髪型にして欲しい、そう強く思っています。

 ご長寿にならずとも、例えば、ロングの髪型にしたいのに、虎刈りにされたらたまったもんじゃないですよね。

 当たり前です。

 でも、この当たり前が通用しないのです。

 認知症で、上手く髪型をオーダーできない人の場合、施設からオーダーされる髪型は、とにかく「短く」。

 なぜか、判りますか?

 まず、サービス提供の頻度が低減できること。

 それに伴い、費用が削減できること。

 しかし、お気に召さない髪形にされてしまった利用者さんの気持ちは、認知症に罹患していると、全く判らなくなってしまっているのでしょうか?

 言うまでもなく、答えは、ノー。

 気に入らない気持ちは、しっかりとあります。

 なので、不穏になったり、不機嫌になるのです。

 言葉で上手く伝えられなくても。

 なので、余計に認知症症状が露呈しやすくなるのです。

心は認知症に罹患しない

 認知症は、脳という物質に生じる疾患であって、心は認知症に罹患しません。

 おそらく、多くの人は、まずこの現実が理解できないのではないでしょうか。

 当たり前ですが、ご自分の心を直視した経験なんて無いですよね?

 そもそも、心を直視するアプローチは、瞑想しかありません。

 その一つが、マインドフルネスです。

 実践を続けていくと、物質としての肉体と心がキチンと洞察できるようになります。

 洞察できるようになって初めて、心は歳を取らない、場所を取らないという事実を発見できます。

 マインドフルネスへの言及は、ここで留めますが、心は認知症に罹患しないのですから、心を通わせればコミュニケーション上のトラブルは減ります。

 言葉を使わなくても、表情で、身振り素振りで、目線で、口元で、触れ合うことで、心は通わせられるのです。

 たとえ、認知症で発語が出来なくても、その人に似あう髪型は「短く」ではなく、どのようなヘアースタイルが似合うかを来てくれた美容師さんと一緒に考えて差し上げれば、その気持ちは必ず伝わります。

 これが介護の本懐です。

母には亡くなるその時まで身だしなみを整えてあげました

 最期を迎えることになった入院の時も、キチンとした装いと髪型で病院に向かいました。

 向かうにあたっても、自宅から病院までタクシーです。

 距離もありましたが、都内で電車に乗せて疲れさせたり、通院途中で病状が悪化するのを懸念しました。

 この程度の配慮はしてさしあげるのが当然です。

 普段からヘアースタイルも月に一度程度の頻度で美容室に連れていきました。

 美容室選びには、隣の家に住む、パーキンソンを患うお母様の介護を20年以上みてきた友人のお姉さんに紹介してもらいました。

 ご長寿の方にも、非常に丁寧に親切に接してくれる素敵な美容師の方でした。とても良い思い出です。

 ヘアースタイルのオーダーは、白髪染めは必ずやってもらい、そのうえでボブを基本に季節にあった感じに仕上げてもらっていました。

 およそ、1時間半から2時間かかるので、母を美容室にお願いしている間に、私は自宅の雑用をこなします。

 そして、仕上がると美容室から電話がかかってくるので、お迎えに向かいます。

 トップにあるアイキャッチの画像は、美容室でのワンシーンで、ちょうど母のヘアースタイルが完成した後ろ姿です。

 ボブは、私の好みです。

 なので、母には強要になるのですが、いつも「似合う、似合う、いいね!」と喜んでくれました。

 実は、岳母の介護の時代も、岳母にショート・ボブを強要しました。

さくら

絶対に似合いますよ!

 それまで、いわゆるおばさんパーマ的なヘアースタイルだったのが、一変して都会的になったのには岳母ご自身も喜んでくれていました。

 もちろん、どの施設もヘアースタイルを「短く」と強要しているわけではないと思います。

 あくまで一部ではそうだ、というレベルの話です。認知症が進んでしまい、発語が出来なくても、その人を輝かせてあげることは、いくらでも出来ます。

 介護に際して、おもいやりの気持ちは、必ず伝わり、それが最も認知症症状を露呈させない特効薬になります。

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